御話

□いつまでも手を繋いで
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<いつまでも手を繋いで>




クリスマスイブはお互い家族と共に過ごす事になっていた為、二人で会う約束は25日のクリスマスに決めていた。

普通の恋人同士ならばクリスマスだから気合いの入ったプレゼントを用意するものなのだろうが、コートを着てマフラーも巻いた俺の手にその用意はない。

『俺たちはまだ親から小遣いを貰っている身だ。だからクリスマスプレゼントはお互い無しだ』

そのように弦一郎にくぎをさされたのは12月に入って間もない頃だった。

エスカレーター式で高等部へ持ち上がる俺たちは一線は退いたが未だに部活動を続けていた。

弦一郎と並びながら家路を歩いていた時にそのように告げられた。

「それは些か寂しくはないか?誕生日にはちゃんとプレゼントを受け取ったよな」

「誕生日は各々がこの世に生まれた何にも代え難い日だ。それを祝う事は当たり前だが、クリスマスはキリスト教の祝いだろう?」

「その考えでいくと俺は永遠に弦一郎からクリスマスプレゼントは貰えない訳だな」

恋を紡ぎ合う者同士として、それはあまりにも虚しい。

確かにキリスト教の信者ではないが、俺とて人並みに浮かれたい事もある。

ふぅと聞こえるように溜め息を吐くと、弦一郎が慌てて訂正にかかる。

「ずっとプレゼントを渡さないと言うわけではない。ただ俺がちゃんと自分で稼げるようになってから正式に渡したいのだ」

「弦一郎……」

「駄目か?」

「駄目な訳はないだろう。それではクリスマスプレゼントはお互いがきっちりと自立してからという事だな。承知した」

「そうか」

「プレゼントは無いが楽しいクリスマスにしよう」

「ああ」

弦一郎の頭の中はきっとクリスマスに行く予定の水族館の事に傾いているのだろうが、俺はそれよりも弦一郎と共にクリスマスを過ごせる事の方が楽しみだった。

「弦一郎」

「何だ?」

「楽しみか?」

「ああ。蓮二と二人で行けると思うと今から心が弾むようだ」

それは俺が弦一郎に告げて恥じらう姿を愛でるつもりだった言葉だ。

包み隠す事を知らない弦一郎には困ったものだが、そこもまた俺の心を擽る。

「蓮二、どうかしたか?」

「いや、何でもない。さぁ早く帰ろう。風邪をひくといけないからな」

「俺はそんなに柔では無いぞ」

「首根っこを縮めながら言われても説得力が無いな。何なら手でも繋ぐか?」

「……いらん!!早く帰るぞ!!」

寒さ以外の理由で頬を朱色に染めながら弦一郎は急ぎ行ってしまう。

恐らく弦一郎は俺がからかっていると勘違いしているのだろう。

「手が繋ぎたいのは本当なのだがな……」

「蓮二、おいていくぞ」

俺の声は弦一郎の声にかき消された。
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