小説置き場
□『依存』 執筆中 閲覧は自由
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「旭(アサヒ)先輩は私のこと好きじゃないんでしょ?」
空き教室で彼女と二人で昼食を食べていたら、急に泣きそうな顔をしてそう云われた。
「何云ってんだ?」
急に言われ訳が解らず眉を顰める旭。
すると、涙を溜めた瞳で彼女は旭をキッと睨んだ。
「だって一回も好きって言ってくれたことないもん!!携帯が鳴るとデート中でもいなくなっちゃうし・・・今だって私といるのに楽しそうじゃない!!」
「・・・好きだよ。」
乾いた音が教室に響いた。
後から頬に痛みがはしる。彼女の綺麗な爪が凶器となり旭の頬に一筋の紅い線をつける。
彼女は少し息を荒くし、目を吊り上げ、叩いた手を握り締めた。
もう、面倒になった。
「どうしたいんだよ?どうすれば満足?」
声は冷め切っていた。
旭は、溜め息を吐き呆れた目で彼女を見た。
彼女は信じられないというように瞳を見開き、下唇を噛んだ。
「別れる?」
そう切り出したときには、涙はもう彼女の瞳から漏れていた。
「最低。」
嗚咽交じりにそう言い残すと、口に手を当て、涙を流し去って行った。
かったるそうに髪をかき上げている彼、海原(カイバラ)旭は来る者拒まず去る者追わず主義者だった。旭はとても容姿が良かった。その為、幼い頃から女子に人気があり、もう両手で数え切れないほど告白をされてきた。しかも、旭は告白されれば誰彼構わず同意した。だが、同意はしたものの特に告白してきた人に対し恋愛感情があるわけではないため何処か彼の対応は冷たいものだった。ソレはその人たちに寂しさを与えた。だが、そのことを旭に訴えても彼の反応は薄く、その人の心に虚しさを残し終わるのだった。そして、この彼女もその被害者の一人だった。
「だりぃ。」
食べたゴミをビニール袋に入れると旭もその場を去った。
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