小説置き場
□初詣
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<初詣>
厚手のコートを羽織、紺色のマフラーを首にかける。
靴を履き、つま先でトントンと床を蹴る。
今日は近場の神社にお参りに―初詣に―行く。
ドアを開けようとノブに手を掛ける。と、同時にインターホンが鳴った。
ドアを開けると、いつものように彼が立っていた。
「あけましておめでと。」
毎年変わらず、キミはそう言って無邪気に―少し幼さを残した顔で―微笑む。
「今年もよろしく。」
そして俺も毎年変わらず同じ言葉を言い、拳を出す。
「こちらこそ。」
雪人は俺の拳に自分の拳で軽く小突く。
互いの目を見合い、悪戯坊主のようにニカッと笑う。
「じゃ、行こうか。」
そう言って歩き出した。
彼は鹿谷雪人(カノヤユキト)。幼稚園前からの幼馴染み兼親友。
風がピュ―と吹いた。
「さみー!!」
寒がりな雪人は叫びながら、首にグルグル巻きにした白いマフラーに顔を少し埋めた。鼻の頭がほんのり赤い。
ポケットに入っていた懐炉を取り出し、雪人の額にあてると「あったけ〜」と言い顔を綻ばせた。
俺の手から懐炉を受け取り、頬に当てて「ぬくい〜。」と幸せそうに微笑んでいる。
まだ幼さの残っている雪人の容姿は、女の子や小動物のように可愛らしくて苦笑してしまった。
男に対して可愛らしいと思うのはやはり変なのだろうか?
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