小説置き場

□初詣
1ページ/6ページ




<初詣>






厚手のコートを羽織、紺色のマフラーを首にかける。
靴を履き、つま先でトントンと床を蹴る。




今日は近場の神社にお参りに―初詣に―行く。






ドアを開けようとノブに手を掛ける。と、同時にインターホンが鳴った。

ドアを開けると、いつものように彼が立っていた。



「あけましておめでと。」

毎年変わらず、キミはそう言って無邪気に―少し幼さを残した顔で―微笑む。



「今年もよろしく。」

そして俺も毎年変わらず同じ言葉を言い、拳を出す。



「こちらこそ。」

雪人は俺の拳に自分の拳で軽く小突く。


互いの目を見合い、悪戯坊主のようにニカッと笑う。


「じゃ、行こうか。」


そう言って歩き出した。


彼は鹿谷雪人(カノヤユキト)。幼稚園前からの幼馴染み兼親友。


風がピュ―と吹いた。


「さみー!!」

寒がりな雪人は叫びながら、首にグルグル巻きにした白いマフラーに顔を少し埋めた。鼻の頭がほんのり赤い。

ポケットに入っていた懐炉を取り出し、雪人の額にあてると「あったけ〜」と言い顔を綻ばせた。

俺の手から懐炉を受け取り、頬に当てて「ぬくい〜。」と幸せそうに微笑んでいる。

まだ幼さの残っている雪人の容姿は、女の子や小動物のように可愛らしくて苦笑してしまった。



男に対して可愛らしいと思うのはやはり変なのだろうか?




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ