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「あのっ」
突然右腕を掴まれた誠太郎は、みっともなくもぎゃっと短く悲鳴を上げた。
そして、すぐに上がった脈拍に翻弄され、公園に駆け込んできた男に声を掛けられたのだと認識するのに数秒掛かった。
そしてそれを理解した途端、なぜという疑問が頭をいっぱいに埋め尽くした。
「すみません、少し聞きたいことがあるのですが」
「…?」
眉を下げていかにも困っています、という顔で誠太郎を見上げる男を無視するなんて出来ず、口を結びながらも頷いて、誠太郎は先を促した。
それに些かほっとした男は、曲げていた背をしゃんと伸ばし、誠太郎を見つめ直した。
背筋を伸ばした男は誠太郎よりも背が随分と高く、誠太郎は目線を合わせようと少し頭を上げた。
「近くで、4歳くらいの男の子見ませんでしたか?」
「4歳…いえ、見なかったですね。」
「そう、ですか」
誠太郎の答えを聞くと徐々に俯き、そして、苦しそうに唇を噛んだ男を観察していた誠太郎は、胸が痛むのを感じた。
もう暮れかかっているのに4歳の子供が戻らない不安と、何かに巻き込まれたのではという恐怖や焦燥が男のしぐさでありありとわかったからだ。
誠太郎には年の離れた弟がいるせいもあり、すっかり男の気持ちに同調してしまった。
俯き加減の二人を、今にも消えそうな夕焼けが照らす。
「ありがとうございます。では、」
「あっ!」
いつの間にか男の気持ちがまるで自分のことのようになってしまった誠太郎は、後先考えずに去ろうとしていた男に声を掛けてしまった。
それが、自分の予想外な未来を引き連れてくると言うことを知る由もなく。
「ーー俺も、探します!」
next?
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