シリーズ小説
□スタート!!番外編
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普通、平凡。
彼が去った後私が部屋に戻ると、理事長がそう仰った。
確かに、普通で平凡。
何て事はない、きっと何処にでもいるような高校生。
でもなんだか、構ってあげたくなるような雰囲気を持っている。
一野 紘太。
森ノ宮学院に通う、普通で平凡な高校生。
いつのまにやら季節は移り変わり、この寒さを越えれば紘太さんに出会った季節をまた迎えようとしている。
ということは、一年。
紘太さんが入学して、もうそろそろ一年経とうとしている。
入学した頃は色々あり、ある時偶然出会った紘太さんは、どことなく元気がなかった。
でも今では仲の良い友人も沢山出来、賑やかな日々を送っているよう。
…それが少し寂しいだなんて、想うときもあるけれど。
とん、と書類をまとめ、確認済のトレーへと置く。
今日は珍しく面会などが一切無かった為、理事長室にある私の机で書類整理をしていた。
ちなみに理事長は奥の部屋で仮眠中。
あの人は机仕事を嫌うので、本来ならやるべき仕事がある時も奥の部屋に篭もってしまっている。
「全く…」
ああいった生まれながらにして統率力があるような人は、面倒くさがりな部分がある気がする。そのせいなのか、私が判断してはいけない内容の書類まで任せようとするので、いつもそれを断るのに苦労するのだ。