フルメタ

□キャンプ
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「だいたい相良くん、好きなタイプとかあるの?」

だいたい思春期時に一度は上る話題だ。

「タイプ?」

案の定よく解らないといった風に宗介は首を傾げる。

「こういう人とずっと一緒にいたいな〜って思う理想像みたいなものないの?」
「理想像…」
「例えば、料理がうまいとか、優しいとか…いろいろあるだろ〜?」

むーん…と考えてしまった宗介に風間と小野Dは笑いながら深く考えるなとせっつく。

「そうだな…体調管理ができ、あらゆる装備を使いこなし、地理や地形などに詳しく…また」「ストップストップ!そう言うのじゃなくて!」
「何故だ風間。重要なことだぞ。」
「あのなぁ相良…そういうタイプじゃなくて好きな女の話だよ」

なんでこう話が通じないんだと半分げっそりしながら風間と小野Dはため息をついた。

「好きな女…」
「いないとは言わせねぇぞ〜」
「そうそう」

さっきよりも真剣な目で二人に前のめりになりながらさぁ吐けと詰め寄られ
宗介はなんとなく逃げたくなったが、こういう話は女子がやたら話しているのを思い出し、これが世間一般の若者の会話なのだろうと納得することにした。

「そう…だな…」

宗介は元々あまり女性とは関わりがないので
タイプはかなり偏るが芯の強い女性が多いように思う。
そしてよく笑い、明るく、皆優しいように思う。
そして自分はそれに救われている気がするのだ。

その中でも千鳥といるときが自分にとって一番安らぎを覚える。

「相良?」

遠くを見たまま何も言わなくなった宗介に
頭パンクしちゃったかな?と心配になった風間が声をかけた。
すると宗介は真っ直ぐ風間を見ながら話し出した。

「千鳥といると安心する。」
「…へ?」

それはタイプと違うんじゃぁ…
ぽかんと間抜けな顔になる風間を宗介は気にしない。

「千鳥といる時間が俺は一番大切にしている。彼女は大切で特別なんだ」

小野Dがうーんと首をひねった。

「つまり千鳥タイプがいいってことか〜?」

小野Dの言葉に宗介は首を振り続けた。

「いや…千鳥でなくてはだめだ。千鳥と離れると彼女に何かあったらと気が気でなくなる。」
「それってつまり…タイプどうこうではなくって…て事かな?」
「相良…卒業式のあれをみてりゃわかるけどよ…そうじゃなくてだな〜」

どうやったらこの男に今話しの話題になっているタイプとは何なのかをわからせる事ができるのか頭をひねっていると

「やっぱり相良くんはかなちゃんが大大大好きって事だね☆」

戸惑う男二人の後ろから満足そうなかわいらしい声が聞こえた。

「「と…常盤?!」」
「常盤さんいつから起きてたの?!」

んーっと伸びをして体を解す恭子は特に何ともなげに

「はじめから☆面白そうだから皆で寝たふりしちゃった☆」
「「「皆?」」」

固まってしまった男三人を尻目に起きて伸びをして体を解す残りの女子。

「ばかな…さっき確認した時はは寝ていたはずだ」

まさか自分の判断が間違えていたとは…と宗介だけは違う理由で固まっていたが
一向に起きない女子を見て首を傾げる。

「千鳥?やはり寝ているのか?」確認しようと近く宗介
「うるさい!」

起きあがらずに丸まったまま返事をするかなめ。

「かなちゃん照れてる〜」

にやにやと恭子が笑った。

「恭子!!」
「はいはい。ご飯食べよう〜」

思わず起き上がってしまったかなめは
うーとかあーとか言いながら
恥ずかしそうに宗介から顔を背けた。

「千鳥?」
「うー…そーすけのばか」

いつもと変わらない雰囲気の宗介に
少し膨れながらかなめは立ち上がって皆の元へ歩いていった。

「???」

宗介はよくわからなかったが飼い主の後ろをついて行った。



「相良くん、ちょっといい?」
「常盤か…どうした?」

食事の後雨も上がり、男子は釣り竿を持ち、女子は水着に着替えて洞窟の近くの川に来ていた。
天気は回復に向かい、釣りをしてるちょっと下流では女子が水遊びをしている。
釣れ具合も上々で今から夜の食事が楽しみだ。

少し離れたところで全体を見渡せる場所に陣取った宗介は周りを警戒しながらそれなりに釣りを楽しんでいた。

「わぁ〜いっぱい釣れてるね☆相良くん釣りが趣味って本当だったんだ」
「肯定だ。特に今日は調子が良いようだ。」

しかけから目を離さずに会話する宗介のとなりに座り、恭子は言葉を続けた。

「あのねかなちゃんは可愛くて、スタイルよくて、モテモテさんなのに、凄い恥ずかしがり屋で、素直じゃないけど、凄い頑張りやさんなんだ」
「そうだな」
「相良くんが来てからかなちゃん毎日楽しそうであたし嬉しくって」

えへへ…と本当に嬉しそうに恭子は笑った。

「そうか」
「うん!だからね…ずっと…かなちゃんのそばにいてあげてね」

恭子は楽しそうにはしゃぐかなめを見ながら言った。

「相良くん…かなちゃんのそばにいて…変わったから。」
「……」
「かなちゃん…守ってね」
「常盤…」
ぽつりと呟いた恭子の横顔は
いつもの無邪気な彼女からとは別人の様に大人びていた。
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