フルメタ

□短編集(宗かな)中心
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[雨]



ゴロゴロ…

「む…雨か?」

さっきまではいい天気だったのだが
どうやら雷が鳴り始めたようだ。
そういえば夏は夕立が多いと
かなめが愚痴ていたのを思い出した。

バタバタと彼女の足音がした。
ベランダに出たようだ。

「危険だからいきなり出るなと言っているのに!」

慌てて俺もベランダに向かう。
その瞬間

ピシャアァアァアッッ!!!

「キャアァアアッ!!」
「かなめ!!」

雷が近くで落ちたらしい音と
かなめの悲鳴が聞こえる。
同時に勢いよく雨が降り始めた。

「かなめ!大丈夫か!!」

リビングにつくとベランダへの大窓の下に
大量の洗濯物を腕一杯に抱き抱えて
座り込んでいるかなめがいた。

「どうした?」

窓を閉めカーテンを引き、かなめの正面にしゃがむ。

震えていた。

泣いているのか
そんなに雷が怖かったのだろうか。
確かにかなめは雷が嫌いだった。
雨の日もよく悲しそうにしている。
でも何度聞いても何でもないの
一点張りで教えてくれない。

頭をなでようと手を伸ばす。

「ッッ!?」

ふれた瞬間弾かれたようにかなめが顔をあげた。
かなめの表情を見た瞬間
俺は彼女を強く抱きしめた。

「そ…すけ…」

目が恐怖に満ちていた。
あれから二年まだこんな顔させてる
自分が許せなかった。

キツく抱きしめる。

「そーすけ…くるしぃ…」

暫くしてからかなめが苦しそうに呟いた。

「す…すまん」

慌てて手をゆるめる。

「…ねぇ」
「ん?」
「あたしって雨…似合う?」
「は?」
「雨…」

キュッと弱々しく抱きついてきながら
かなめがつぶやく。

「そうだな…俺は雨より雪の方が似合うと思うぞ」

「…雪?」
「ああ。」
「…どうして?」
「それは…」

そこで俺は言葉に詰まった。
自然と顔に熱が集まる。

いかん…これはいえん。

「ねぇ!なんでよ?」

かなめが顔を寄せてもう一度聞いてきた。

「なんとなくだ」

もちろん納得はしなかったが俺はガンとして言わなかった。


…それは雪の舞う中の君がまるで天使のようだからだ


そんな恥ずかしい言葉
君にいえない。



end
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