フルメタ

□欲白(宗かな)
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[欲白]


「か〜な〜ちゃんっ!おっはよ!」

校門付近でかなめを見つけ恭子はいつものように声をかけた。

「恭子〜おはよ〜」

いつもは低血圧なかなめは気怠そうに軽く挨拶するだけなのだが今日は元気そうだ。

「あれ?かなちゃん今日の朝は元気だね〜」

探るようにのぞき込むとかなめはその視線から逃れるように横を向いた。

「そ…?」
「うん。なんか良いことあった?」
「ん…あった…かなっ」

少しはにかむように笑うかなめに恭子は目を輝かせた。

「なになに〜!」
「教えない〜」
「え〜」

どうせ相良君関係だ!と思いながら教えてよ〜と甘えてみせた。
しかし

「今はだめ。」

そればかりで取り付く島のないかなめに恭子は少し拗ねてしまった。

「かなちゃんのけちんぼ」
「ごめん、今度話すからさ」
「絶対だよ!」
「はいはい」

先生が来たので仕方なく引き下がっていった。
まだ後ろの席には彼はいない。
出席を取る先生がため息を付くのが解った。

(あいつ…慌ててるだろうなぁ…)

思い出してにやにやしてしまう。
昨日の夜の出来事をまだ恭子には言えない。
ちゃんと言ってくれるまでは言えない。

(そーすけのばあか)

そうは思っても顔は笑ってしまう。
朝のHRが終わりに近づくと
バタバタバタッ―ガラッ

「千鳥!」

彼が焦った顔をして教室に入ってきた。

「相良君!遅刻ですよ!」

担任が呆れたように声をかけるが聞こえてないのか顔を赤くし宗介はかなめの隣に立つ。

「ち…千鳥…その…」
「相良君。おはよう。」

かなめはまるで宗介が転校してきた時のような反応だ。
ますます宗介の顔が赤くなった。

「ぅ…か…かなめ…」

下を向いて消えそうな声でなんとか呟く宗介にクラスメイトは一瞬ざわっとなった。
がしかしすぐに教室中が担任までも息を飲んで事の成り行きを見守った。

「なぁに?聞こえない。」

少し怒ったように言うかなめに固まる宗介。
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