treasure
□頭脳明晰が故
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花井は可哀想な事に頭が良かった。
故に田島の放つ唐突で理解不能な単語をひとつひとつ考え込んでしまう性格であった。
そして花井は何故田島が自信過剰と笑えない程優れた技術を持っているのか何故俺ではないのかと妬みや羨望を持って延々と考え込んでしまう性格だった。
総合して花井は田島に劣等感を抱かざるを得ない。
全て花井の頭が良いせいだ。
あの荒唐無稽な考え方を一生涯理解する事は無いなと花井は冷静に考える。
プレッシャーと云う言葉を知らないかのように田島は素晴らしい技術を惜しみなく発揮する。
花井はプレッシャーと云う言葉を頭で躯で知っていたので恐れと云う感情を持ち合わせ故に慎重だった。言動も行動も。
花井は可哀想な事に頭が良かった。
自分に無い物を持ち合わせる田島への妬みや羨望がそれだけでは無い事に勿論気付いていた。
それが恋なんて馬鹿馬鹿しい感情かもしれない事に勿論気付いていた。
田島本人に白状したらそれを恋と気付かずに簡単に鸚鵡返しをしてきそうなその『好き』と云う言葉を花井は喉の奥に飲み込んで胃に溜め込んだ侭だ。
一生涯気付かせない気付かない想いを抱えて花井はまた考え込んでいる。
全て花井の頭が良いせいだ。
ー終ー