□天気
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――てんき――




ゆうべは雨だった。ひどい雨だった。
春になりきれていないこの季節

冷たい雨だった。



今は青一面が広がっている高い空。



「あーあ、お仕事終わっても憂鬱になっちまう」


崩れ落ちそうな薮椿の花もいよいよ今日明日で終わるだろう。日を浴びて照る葉だけは眩しい。


常人ならば視界の効かない夜の雨も
“出来のよい”忍には意味はなかった。




まあ、生臭さは落ちたかな。

常より手はずが悪かった。雨のせいになどできはしない。



「佐助ー!帰ったのか!」


ぎょっとした。
なんだって街道に自分の主がいるのだ。城下ならばまだしも、なんたる無防備。

主の後ろに控える男が、主お声が、と控えめにたしなめる。仕事に向かう前に警護を命じておいた者だ。



「旦那…なんでこんなとこに」


今佐助は無宿者とも旅の物売りともつかない姿をしている。あれほどの仕事をした後、忍が堂々と街道から帰るとは誰も思うまい。



「おぬしと連絡をとっていた忍隊の者が」


瞬間、細まった佐助の目が後ろの男、才蔵を射抜く。

…わざと部下に漏らさせたな…。



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