Another Novel
□pluie 〜fantoccini〜 3.5
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この部屋には窓がないからよくは聞こえないけど、沈黙の中を、雨音だけが静かに駆けていく。
その音は少しだけ物悲しそうで。
雨の降る風景を見たりその中を歩くのが好きなルリと、湿気で羽根が重いと気怠そうにするわりには水溜まりではしゃぐシオンとは違って、あたしは雨の日は憂鬱になる。
けれど、そんな憂鬱は意識しなきゃ感じないほどのもので。
(だけど、雨の中で倒れていたあいつは、どう思っているのかしら…)
突如、ルリが拾ってきた、あいつ。
オリジナルとは違うあいつの赤い双眸はいつだって、歪んだ赤をしていて。
それが、如実にあいつの闇を物語っていて…。
「なぁ、アリア」
「なぁに?」
シオンの向かい側に腰掛け、持ってきていた雑誌を読みながら、カップに再び口をつける。
たまたま開いたページにはユーリが載っていて、知らず笑みが浮いた。
けれど、すぐにその笑みは消えた。
だって、返事をしたものの、名を呼んできた当の本人からは何の言葉も返ってこない。
雑誌から視線を動かし、ゆっくりとシオンへそれを向ければ、彼はあたしの顔を少し影を落とした碧眼で見詰めていて。
「ルリが拾ってきた、あいつってさ……」
漸くそこまで言って、しかし、シオンは再び唇を閉ざしてしまった。