Another Novel
□pluie 〜fantoccini〜 2
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その聞き覚えのある声に反応して、横になったまま視線を巡らす。
すると、右側の向こうの方…硝子張りの窓が見える辺りに、漆黒の色を見つけた。
部屋の明かりと言えば、自分の横になっているベッドの脇に置かれた棚の上の蝋燭だけだというのに、何故か目立つその色を見詰めたまま身を起こす。
「……気分は、どうだ…?」
「…………」
雨音が気になり、良くも悪くもないが、要らぬ心配を掛けられては面倒なので、無言で大丈夫だと一度頷く。
すると、意外にも相手から返された言葉は、「…そう」のみだった。
何とも言えない、呆気なさ。
つい、惚けてしまった。
いや、何かを期待していた訳ではないが、少し拍子抜けしてしまったのだ。
だって、アイツがわざわざオレをここまで運んできたんだろ?
そうまでする奴が、これ程までにあっさりとしているとは……。
もっとしつこく心配されると思っていた。
「着替え……サイズが合わなくて………悪いが、汚れたままだぞ…」
そう言われて、初めて自分の姿を見下ろす。
あぁ、本当だ。
拭かれてはいるがまだびしょ濡れで、しかも泥が付いたままの服装だ。
よく見れば、ベッドシーツにまでその汚れは付着してしまっていた。
「…悪ぃな。ベッド、汚しちまって」
未だ出窓に腰を下ろし、窓の外を見詰めている、(たぶん)彼を見遣る。
すると、彼はゆっくりとこちらへ顔を向け、小首を傾げた。
「支障は、ない。……それ、使ってないベッド…だし」
口調までもが動きのように緩慢で、少し聴き辛い気もするが、まぁ気にしなければ気にはならない程度。