□guilty 〜追憶の想い〜
1ページ/9ページ




「……魔女……お願いがあるんだ」






 満月が照らし出す森の中で、自分の少し掠れてしまった声が闇に吸い込まれそうになった。




「…………」




 目前で闇を纏う魔女は眉根を寄せ、ぼくを見上げた。

 灰色の髪が月明りを妖しく反射させている。





「あの子の記憶を消す薬を、作ってくれないかい…?」





 彼女の姿が、今は遠くにいるあの子……ユーリを思わせた……












guilty 〜追憶の想い〜












 ぼくを睨むように見上げてくる彼女は表情を崩さない。

 夜の闇の中、ぼくらは黙り込む。



 最後にぼくが言葉を発してからどれほど時間が経っただろうか。
 たぶん……月の傾きからしてまだ一刻は経ってないだろうと月を見上げ、ぼんやりと思った。




 すると、何か言いたそうに口を開いたが、ぼくが訝しげに小首を傾げると彼女は口を噤んでしまった。


 そんな彼女に苦笑し、俯く。

 その視線の先には満月に照らされて色濃く映し出されたぼくの影が。




 くすり、と、笑みを浮かべた。




 どうしようもなく愚かな頼み事をしていることくらい、重々承知している。



 けれど、こんなことを頼めるのは彼女しかいないんだ。


 魔女であり、ぼくらと一緒にいてくれたロキに頼む他なかったんだ……。




 あの子を救うには、

 彼女の力を借りる他

 手立てが全く



 なかったんだ…。





 あの子は今、これ以上はないというほどに傷ついている。

 苦しんでいる。


 それをぼくにはどうすることもできないから。



 だって…、

 あの子があんなにも苦しんで壊れそうになってしまっているのは…ぼくの所為でもあるんだから。



 ぼくがあの子と出逢った所為。

 ぼくが……あの子を愛した所為。

 ぼくがあの子を求めた所為。



 だから…





「あの子の記憶を……すべて」





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ