□entreaty 1
1ページ/8ページ




 夢。




 幻の世界。





 総てが儚くて、虚ろな世界。







 その中に一人佇む、ぼく。



 この世界でもぼくは…虚ろだ。




 自分自身ですら、本当に自分が存在しているのか判らなくなる。




 でも、それももう、慣れた。




 嘲笑う様に嗤い、俯く。






 すると、自分の足元に人影が映った。



 ふと、顔を上げればそこには―――






『ユーリ…』






 その名を口にした途端、何故か心が和んだ。




 自然と暖かい笑みが浮く。





 そっと、手を差し出す。






 ああ、大丈夫。



 それでも大丈夫だ。




 君が…ここにいてくれれ……ば








『!?』








 彼の幻に触れようとした途端、


 それは泡の様に一瞬にして消えてしまった。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ