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□entreaty 1
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夢。
幻の世界。
総てが儚くて、虚ろな世界。
その中に一人佇む、ぼく。
この世界でもぼくは…虚ろだ。
自分自身ですら、本当に自分が存在しているのか判らなくなる。
でも、それももう、慣れた。
嘲笑う様に嗤い、俯く。
すると、自分の足元に人影が映った。
ふと、顔を上げればそこには―――
『ユーリ…』
その名を口にした途端、何故か心が和んだ。
自然と暖かい笑みが浮く。
そっと、手を差し出す。
ああ、大丈夫。
それでも大丈夫だ。
君が…ここにいてくれれ……ば
『!?』
彼の幻に触れようとした途端、
それは泡の様に一瞬にして消えてしまった。