The Mortal Sin

□The Mortal Sin 10
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 胸の中で蠢いたのは、
 吐き出してしまいたくなるような、ぐるぐるとした感情。

 吐き出せば、楽になれるだろうか。
 吐き出し、泣き叫べば、この想いは消えるだろうか。

 誰かに、縋れば………?











「……チビ、何処に行くんだよ」




 ふらりと立ち上がると、背を向け合っていた彼の方から声が聞こえてきた。

 振り向き、紅い髪を見遣る。
 だけれど、コウがこちらを振り向くよりも先にオレは顔を逸らした。




「……関係ねぇだろ」




 ずかずかと彼の部屋を歩き、窓辺に近付く。
 そうしてカーテンを開けば夜空では月が輝き、その周りを夜空よりも黒い雲が素早く流れていった。




「止めとけ。今夜、また荒れるってよ」




 雨の匂いがする。

 後ろで呟いたコウをやはり振り返ることなく、窓を開け、微かに湿った風の吹く外へ身を乗り出した。


 羽根が……重い。
 こりゃ、ほんとに雨が降るな。


 だけど、




「………関係ねぇよ…」




 翼を強く羽撃かせ空へ舞い上がる最中、「シオン」と呼んだ声がしたが、
 オレは構わず夜空に向かって翔んだ。




(…………でも、行かなきゃ…)




 まるで、オレを拒むかのような向かい風の中、
 オレはただ、妙な焦りを感じて月を睨んでいた。












The Mortal Sin 10












「スマ、……スマイル」




 ソファーの上でゴロゴロと寝転がっていた碧い髪を軽く引っ張る。
 そうすれば、仰向けで雑誌を眺めていた彼は雑誌を下げ、私の顔を見上げてきた。




「なんだイ?ユーリ」




 肘掛けを枕に、スマイルが不思議そうに小首を傾げる。
 私は体を預けた背凭れ越しに、彼の癖の強い髪を撫で。

 されるがままの彼は、更に不思議そうな顔をしていた。

 それに笑みを零し、私は彼の碧を一房掬い上げる。




「私、ロキの許へ行ってこようと思う」




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