The Mortal Sin

□The Mortal Sin 8
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『そうだ』





 最近、度々ぼくの家へやってくる赤い髪のおにーさんが、紅い眼をぱっと瞬かせてこちらを振り向いた。


 後から知ったんだけど、この人が、おとーさんがよく話して聞かせてくれた吸血鬼一族の1人なんだって。


 ぼくは、そんな綺麗なおにーさんを見詰め、首を傾げた。




『お前をユーリと結婚させてやろうっ。お前なら許してあげるよ』

『ゆーり?誰ソレ』

『すっごく可愛いぞー?そりゃもうお姫様みたいにな』

『お姫様ッ?!』




 お姫様ってよく本に出てくる、綺麗で可愛い女のコの……あの?!



 ぼくが興奮して燥げば、おとーさんが何故か慌てていた。





『今度、ユーリに会うか?』





 そう言って、優しく微笑んだ吸血鬼のおにーさん。

 ぼくは嬉しくなって何度も頷いた。


 おにーさんは『ゆーり』の話をする時いつも優しく、穏やかな微笑みを浮かべる。
 その顔が好きで、ぼくはいつも見惚れていた。



 だって、幸せそうに笑ったその顔が、すごく綺麗だったから…。





 ぼくはいつも、『ゆーり』って子は、こんなおにーさんがいて幸せだろうなって思っていた。


 おにーさんも、『ゆーり』がいて幸せなんだろうなって思っていた。







 ………………そう、思って………いたんだ…。








 この時は、何にも知らなかったから……。












The Mortal Sin 8












「――はい」




 ことり……と、小さな音を発てて、淹れてきた珈琲をデスクに置き、もう1つ持っていたカップは窓の外を見遣るオーギュストへ差し出した。

 そうすれば、彼は有難うと呟いた。





「…何か、気になるものでもあるの?」





 問えば、彼は窓に映ったぼくを捕らえ、くすりと笑んだ。



 ………………なんか、子供扱いしてないか…?


 …や。確かに(彼の)子供だけど………。




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