The Mortal Sin

□The Mortal Sin 7
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『――オーギュスト』





 誰かが、名前を呼んだ。


 名前を呼ばれた黒髪の彼は、薔薇の香りが流れてきた方へ視線を向ける。



 折角ぼくにいろんな話を聞かせてくれていたのに……、

 彼は違う方を向いてしまった。




『アル?どうしたんですか?こんな処まで…』

『………』




 振り向いた彼の肩越しに見遣ったそこには、黒いマントに身を包んだ、赤い髪の綺麗な人が立っていた。



 ………女の人…?


 あ、でも胸がないや。



 マントを外し、微かに俯いたその人はなんだか少しだけ悲しそう。


 ううん……なんだか苦しそうだった。



 もう一度「アル?」と声をかけると、赤い髪の人はゆっくりと顔を上げ。





『―――…相談したいことがあるんだ』





 そう呟いた声は、微かに震えていた。



 ぼくが小首を傾げていると、隣にいた彼はぼくの頭を一度撫でてから、赤い髪の人の元へ行ってしまった。




 ……行っちゃうの?


 いろんな話をしてくれていた途中なのに。

 ……ぼく、まだぜんぶ聞けていないよ?



 森の中に住んでいる狼男たちの話や、地球という処の何処か森の奥深くに住んでいる魔女たちの話に、

 ……………それから、ここからずっと北の方にある城に住んでいる吸血鬼の一族の話も。



 まだ、ぜんぶ途中だよ…?




 ねぇ……行っちゃヤだよ……………。




 置いて行かないでよ……。







『…おとーさん……』












The Mortal Sin 7












「久し振りだな……」




 そう言って、ぼくを見た黒髪の男。


 そいつはぼくに似ていて……………いや、ぼくに似ているんじゃなくて、




(……思い出した)




 ぼくが、彼に似ているんだ。



 だって、彼はぼくの………





(父親だ…………)





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