The Mortal Sin
□The Mortal Sin 6
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何も、知らないんだ。
俺は、彼等のことなんて、何一つとして知らないんだ。
彼等がどうやって出逢ったのかも。
彼等がどんな過去を過ごしてきたのかも。
彼等に、何があったのかも。
そして、彼等が俺に隠していることも。
俺は何一つとして、知らない。
「……大丈夫ですか?ユーリ。
何か……暖かいものでも作って持ってきましょうか?」
だから、俺は、
「………あぁ、頼むよ。アッシュ…」
彼の苦しそうに微笑ったその表情にさえ、
いつだって、何も気付かないフリをすることしかできないんだ。
The Mortal Sin 6
いつもの穏やかな笑みを浮かべてアッシュは部屋を出て行った。
ザインが一瞬、そんな彼に声を掛けようとしたが、ぼくが気配だけでそれを止めた。
無理して笑ったアッシュには悪いけれど、まだ彼には何も言えない。
だって、ぼく達がまだ何も理解できていないことを、彼にどう説明したらいいのか全く解らないんだから。
(もう少し……、ぼく達自身が真実をきちんと理解しなきゃ)
じゃなけりゃ、心配してくれるアッシュにぼく達は何も言ってあげられない。
真実を伝えてあげることもできやしない。
(ザイン達の口からじゃなくて、ぼくとユーリの口から直接言わなきゃ、何の意味もないし)
彼とはきっと永い付き合いになるんだ。
いや、そうでありたい。
ならいっそ、真実を総て伝えてしまった方が、蟠りがなくていいだろう。
(だから、アッシュ…………今は、ごめんね)
最後にもう一度ぼくは心の中で、呟いた。