The Mortal Sin
□The Mortal Sin 4
1ページ/10ページ
幼い頃……、
スマイルと出逢うほんの少し前。
毎日が至極楽しくて、幸福せだったと、
毎日が温かかったと、
そんな記憶が、ほんの微かだけれど、
あるんだ。
(今まで、それはただの思い過ごしだと思っていた…)
(私には、確かな記憶なんて皆無だったから)
「私には……ユーリの記憶が、あるから…それで知っているだけなんだけど…」
そう、静かに呟いて、ルリは私達に話して聴かせてくれた。
私の過去を。
赤い髪の彼との…………私の兄との、過去を。
幸福せで、楽しくて、温かくて。
それを思い返せば、至極懐かしく、心が和んで。
それと同時に、涙が出そうなほどに愛おしくて。
(スマイルと一緒にいる時とは少し違う、幸福せ)
あの時、誰かがいつも傍にいてくれた気がする。
幸福せだった日々の中、いつも当たり前のように、傍にいてくれた誰か。
――そう。
血を思わせる薔薇のような、赤髪の誰かが……。
The Mortal Sin 4