The Mortal Sin

□The Mortal Sin 3
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 ――チリン





 微かな、小さな音色。

 優しく、けれど悲しげにそれは鳴り響いて。





 ――チリン





 僅かに胸を、締め上げた。






『――……さまっ』






 ――………誰だ?





 陽の光を浴びて、銀糸がキラキラと輝いている。






『…さま。私ね、』






 銀糸を風に靡かせながら、小さな子供が蹲る。
 その姿が至極愛しくて、けれど、酷く痛々しかった。

 その小さな体は、微かに小刻みに震えている。




 ――泣くな。




 小さな手で顔を覆ってしまった、小さな幼子。

 私の腰と同じくらいの背丈だろうその子。




 ――頼むから、泣かないでおくれ…。







『私、もう………っ』







 ――私が、何とかしてあげるから。


 ――私が、お前の為に。





 ――だから、顔を上げて?




 ゆっくりと上げられた紅玉の瞳が、それでもやはり、悲しげに揺れる。






 ――私がお前を守るから。





 ――私は、お前の為ならば……















「…………ん…」




 ふと、目を開けると、眼前に拡がっていたのは、見慣れた灰色の天井だった。

 まだ、脳がはっきりと覚醒していない所為か、意識がぼーっとしていた。





(私は確か…、)





 そう考え、横たえたままの上体を起こすと、途端に身体中を激痛が走った。

 それは一瞬、意識を手放しかけてしまうほどで。




「ぅっ…………、っ」




 身体中の痛みと軋みを感じながら、やっとのことで上体を起こす

 節々がぎすぎすと嫌な音を立て、至る所が痛んだ。




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