The Mortal Sin
□The Mortal Sin 1
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「おや。お出掛けですか?」
扉を開けると、そこには身支度をしている彼の姿があった。
血を思わせるほどに赤い薔薇色の髪が揺れ、彼がこちらを振り返る。
――チリン。
「お止しになった方がいい。今宵は荒れるようですから」
それでも身支度を止めない彼へ近寄り、彼の赤い髪を撫でる。
見上げてきた双眸も、血を思わせるような赤。
その背に生やす蝙蝠羽も、やはり、鮮やかな赤。
「それでも、行くのですか…」
苦笑を浮かべて呟けば、彼は長い睫毛を伏せ、
しかし、ゆっくりとこちらをもう一度見上げた。
「……呼ばれている気が、するんだ」
頬へ添えた手に、彼の細く白い手が重なる。
「誰に、です?」
「判らない。だが、呼ばれている気がする…」
緩く頭を振った彼の首元で、静かに鈴が鳴る。
チリン。
それが、自分の首元にある鈴へと何かを伝えたのか、共鳴するように自分の首元のそれも、静かな音色を響かせた。
チリン。
「どうしても、行かなければならない気がするんだ」
そう言って細められた瞳が、少しだけ悲しく、だが、確かな光を宿して揺れる。
「解りました。…ですが、呉々もお気を付けて」
彼の額に自分のそれを当てる。
けれど、死人のように冷たい彼からは、何の温もりも得られなかった。
それでも構わず、オレは額を合わせたまま。
「貴方のその片翼では、自由に翔ぶことはできないのですから…」
そう囁くように呟けば、彼はくすりと笑んだ。
その笑みはまるで、嘲笑のようで。
「……そうだな。片翼では、翔べない…」
ずきりと、オレの胸が痛んだ。