Another Novel

□pluie 〜fantoccini〜 6
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 雨音が煩い。


 雨が欝陶しい。




 ざぁざぁと降り頻る雨の所為でうまく前が見えない。


 うまく音が拾えない。




 彼の声が、聴こえない…。




 独り雨に打たれながら涙を流す彼が、よく見えないじゃないか。





 頼むから、もう止んでくれ。





 だって、彼の白く華奢すぎる身体が冷えて、


 冷たい人形のようだと、本当に思えてしまうから…。












pluie 〜fantoccini〜
(エピローグ)













 微かな音さえも掻き消すように降り続ける雨。

 視界すらもそれは覆い隠すように。




「…………」




 そんな暗く、灰色に霞む世界に、白い肌の吸血鬼は異様に目立って見えた。


 立ち尽くしている彼にそっと手を伸ばし、彼の頬を伝い落ちていく涙を拭う。
 けれど、どんなに拭ってやっても、雨の雫と混ざる涙を完全に拭い去ってやることはできなくて。


 それがなんだかもどかしく、オレは無意識のうちに眉根を寄せていた。





「………泣くなよ」

「……泣いて………ない……」





 頭を振った彼は、「誰にも見せず、ユーリが心の中で泣いているから、だから私も悲しいだけ」だと呟く。

 ならば、彼はユーリが泣く度にこうして泣いていたのだろうか。


 他の2人には見せないように。


 独り佇んで、

 独り堪えて。




 彼はずっと、独りで…………?




 そう考えた瞬間、何故だか心が途端に冷えていくのを感じた。


 だってこいつは、いつだって傍にはシオンもアリアもいるというのに、2人から隠れるように独りでここに佇み泣いていた。



 何故だ?


 同じユーリの分身である2人に何を隠す必要がある?
 あの2人にだって少なからずユーリの感情が伝わっているはずの分身なのだから、こうやって独りで泣く必要なんてないじゃないか。



 だのに、彼はどうして……………………。




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