Another Novel
□pluie 〜fantoccini〜 6
1ページ/13ページ
雨音が煩い。
雨が欝陶しい。
ざぁざぁと降り頻る雨の所為でうまく前が見えない。
うまく音が拾えない。
彼の声が、聴こえない…。
独り雨に打たれながら涙を流す彼が、よく見えないじゃないか。
頼むから、もう止んでくれ。
だって、彼の白く華奢すぎる身体が冷えて、
冷たい人形のようだと、本当に思えてしまうから…。
pluie 〜fantoccini〜
(エピローグ)
微かな音さえも掻き消すように降り続ける雨。
視界すらもそれは覆い隠すように。
「…………」
そんな暗く、灰色に霞む世界に、白い肌の吸血鬼は異様に目立って見えた。
立ち尽くしている彼にそっと手を伸ばし、彼の頬を伝い落ちていく涙を拭う。
けれど、どんなに拭ってやっても、雨の雫と混ざる涙を完全に拭い去ってやることはできなくて。
それがなんだかもどかしく、オレは無意識のうちに眉根を寄せていた。
「………泣くなよ」
「……泣いて………ない……」
頭を振った彼は、「誰にも見せず、ユーリが心の中で泣いているから、だから私も悲しいだけ」だと呟く。
ならば、彼はユーリが泣く度にこうして泣いていたのだろうか。
他の2人には見せないように。
独り佇んで、
独り堪えて。
彼はずっと、独りで…………?
そう考えた瞬間、何故だか心が途端に冷えていくのを感じた。
だってこいつは、いつだって傍にはシオンもアリアもいるというのに、2人から隠れるように独りでここに佇み泣いていた。
何故だ?
同じユーリの分身である2人に何を隠す必要がある?
あの2人にだって少なからずユーリの感情が伝わっているはずの分身なのだから、こうやって独りで泣く必要なんてないじゃないか。
だのに、彼はどうして……………………。