Another Novel
□pluie 〜fantoccini〜 3
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ざあざあと、五月蝿い雨の中。
あの時私は、ただ、何となしにその中を歩いていただけ。
深い意味なんて、ない。
雨に濡れるのは大嫌いだけど、雨の中を歩くのは好きだから。
「どっか行くんか?ルリ」
「ちょっと……ね」
微かに、雨の降り頻る外で、弱々しくも、覚えのある気配がしたから。
とか、そんなことはてんで関係ない。
だって本当に、何となしに外へ出て、何となしに雨の中を歩いていただけなんだから。
そして、そこで見つけた彼を拾ってきたのだって、
何となしだ。
深い意味なんて、ないよ。
pluie 〜fantoccini〜 3
オレがここへ来て、2、3日が経った。
「2人とも、おはよ」
朝起きて、何もすることがないからリビングで本を読んでいると、
リビングへ入ってきたシャトルーズグリーンの髪をした女の吸血鬼が話し掛けてきた。
名前は確か…アリアだったか。
「……おはよう」
「くす。仲良しねー」
くすくすと笑いながら彼女が別の部屋へ行くと、
それと入れ替わりで今度は、寝癖の付いた金糸を揺らしながらもう1人の吸血鬼が部屋へ入ってきた。
名前は、シオン…だったよな。
「ぅげ。………………はよ」
あからさまにそいつは嫌そうな顔をして、だけど律義に挨拶をしてきた。
嫌なら挨拶もしないでシカトしてればいいのに…と思うが、それはたぶん嫌なんだろう。