Another Novel

□pluie 〜fantoccini〜 2
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 雨音が、五月蠅い。


 どうしてそんなに、オレを駆り立てるのか。




 どうして、何故…。



 何故、こんなにも、胸が痛いのだろう…。




 理由が……解らない。




 解らない……。














「…ただいま」

「あら。おかえり〜、ル…………」

「あ?なに固まってんだよ、アリア………………………………………て、ルリ!なんだよソレ?!」

「……拾った…」

「ひ…拾ったぁ?!!」




 いや…、普通そう簡単に拾って来れるようなもんじゃねぇだろ。
 びしょ濡れの野郎なんて…。

 ただ、内心だけでそう突っ込みを入れるしか、シオンにはできなかった。












"pluie 〜fantoccini〜 2"












 五月蠅い雨音と共に耳へ入って来る、優しい唄声。

 けれど、その声は微かに震え、哀しい音色を含ませていた。




(……泣いて、いるのか…?)




 あぁ…雨音の所為で、体中が鉛のように重たい。

 誰かが泣きながら、アリアのように聴こえてしまう子守歌を唄っている。
 それが、嫌悪感を覚える雨音以上に、胸を鷲掴みにする。




 ――…何故だ?



 誰だよ……。





 泣いて…、




 ……………泣くなよ…。





 ザアァッという雑音がはっきりと聞こえたと同時に、目を開けた。

 開いた視界に拡がるのは、灰色の天井。
 勿論、見覚えある筈がない。

 だって、つい今し方、『オレ』という存在は生まれたばかりなのだから。



 いや、待て。
 だとすると、ここは何処だ?

 確か、気付いた時には既に、オレは雨の中、地面の上に倒れていて。
 あぁ、もう終わりだ…と、意識を手放しそうになった、その時。


 誰かが、来たんだ。


 唐傘を差し、桜が舞うように着物の袖を揺らしながら、誰かが……






「――……気が付いた……ようだな」




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