Another Novel

□三日月とアメと
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 他人にとってはどうでもいいことでも、

 オレにとっては至極重要なこと。






「…………誰だ…?」






 他人にとっては下らないことでも、

 オレにとっては至極大切なこと。






「……サァ…?
 ダレでしょう…」






 たった1度きり、

 たったの数分だったかもしれないけど。


 喩え君が忘れてしまっていたとしても、
 オレはずっと覚えているよ。



 だって、オレにとっては、大切で掛け替えのない、

 君との出逢いだから。

























「それじゃ、オレ、行ってくるから」

「ん…ハク兄、気をつけてくださいね」

「おぉ。留守番よろしくなー、ヘキ。
 コウも、2人をよろしくな?」

「…おぅ」




 最近ちょっと反抗期気味だけどやっぱり弟思いな次男と、わざわざ玄関まで見送りに来てくれる三男の頭をそれぞれ撫でながらニッコリ笑って。

 オレはいざ家を出ようと、玄関の扉を開けようとしたんだけれど。




「ハクにぃっ、いっちゃやだぁあ!!」

「ぅお、」




 突然、腰辺りにしがみついてきた小さな温もり。
 振り返らずとも誰だか判るそれは、末弟のアッシュで。

 泣きながら必死にしがみつくその姿に、オレはただ苦笑するしかなかった。




「おーい、アッシュー?」

「うぅ…っっ、」

「アッシュ…ハク兄をこまらすなよ」

「ぅ……でも…、でもやだぁああ!!」




 ヘキに引っ張られるも、頑なに離すまいとオレの服を握り締めるアッシュ。

 傍にいてやりたいのは山々なのだが、実際にはそうもいかず、オレはやんわりとアッシュの小さな手を離そうとする。
 だけれど、子供の必死さにはどうにも気が引けてしまい、なかなかうまくいかなかった。

 そうしているうちにも、確実に時間は過ぎていく。




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