Another Novel

□雨夜の2人
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 さらさらと、キレイに揺れる笹の葉。


 今年も今日が来た。

 待ちに待った今日。


 今日はどうしても晴れてほしくって、雨なんか降らないでほしくって。




 だけど、何度窓の向こうを見上げてみたって空模様は変わらない。
 なんだか余計に悪くなっていく気がする…。




「…………あめだね」

「…………あめだね」




 なんて神様はイジワルなんだろう。

























「どうした?メル、ジル」

「ママ…」




 ジルと2人で窓から空を見上げていたら、ママが後ろから僕たちを抱きしめた。

 なんだか、ふわふわ気持ちいい。
 ママにぎゅーってしてもらうと、すっごく嬉しい。


 それなのに、目を開けても空はあいかわらず雨を降らしてばかり。

 僕たちは気付けば大声で泣き出してしまっていた。




「――ゎ、メルっ?ジルっ?」

「ぅえ〜んっっ」

「ママぁ〜っっ」

「いったいどうしたのだ?」




 2人同時に泣き出してしまった僕たちをあやしながら、ママが困った顔をする。

 僕たちが困らせているんだと思ったら余計に悲しくなって、僕たちは壊れちゃったみたいに泣いていた。




「どうしたのぉ?なんだか大雨洪水警報みたいな泣き声なんだケド…」

「そ、それが…私にもさっぱりで…」




 そんな時、ママの影からひょっこりとパパが顔を出した。
 するとそのまま僕たちをいっぺんに抱っこした。

 ママが困った顔をして、パパがニッコリ笑って僕とジルの頭をなでる。

 だから、やっと泣き止んだ僕たちはいっしょうけんめい話そうとするけど、やっぱりうまくしゃべれなくって…。




「だっ、て…!あめーー!!」

「アメ?」




 泣きながら叫べば、ママが小首をかしげながらつぶやく。
 だけどなんかちょっと違う。

 でも、パパだけはふいっと窓の方を向いて。




「……あぁ、雨ね…。おチビさん達はだから泣いていたワケか」




 そう。

 だって今日は7月7日。

 七夕なんだよ?



 パパとママが本を読んで教えてくれた。

 今日は1年に1回だけ、お空に住んでる織り姫と彦星が天の川をこえて、やっと会える日。

 大好きで大好きで、ずっと一緒にいたいけど一緒にいられなくて。


 だから、2人は1年に1回だけ会えるこの日を、1年も待ち続けていたのに。




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