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□似た者同士
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「いつこの辺りへ戻ってきていたのだ?」
「今日だよ。久し振りに君と会いたくなって真っ直ぐここへ来ちゃった」
ヒヒッ…今日の運勢はきっと最高だね。
なんて笑えば、ユーリもぼくの顔を見上げ「そうだな」と笑ってくれた。
…あ、ぼくの方が身長伸びているね。
それほど離れていたんだ…。
あぁでも、この位置から見るユーリの髪って、太陽の光を浴びてすごく綺麗だ。
何十年も会っていなかった所為か、意識せずとも互いの成長へとつい目が行ってしまうのは、そういう年頃だから。
さっきからユーリだって少し悔しそうにぼくを見上げている。
それがなんだか愛らしく見えて、つい笑ってしまうのを抑えられない。
ユーリはユーリで、またあの頃の仇気なさを残している。
けれど、その中にははっきりと妖しげな雰囲気が確かに漂っていて、あぁ…吸血鬼なんだよな…、と改めて思った。
(……少し危うい色気が出てきていないかい?)
咄嗟に変なことを言い出してしまいそうになった口を慌てて塞ぐ。
そうすれば、ユーリは不思議そうにぼくを見詰めていた。
(ぁ、その顔はまだ子供だね)
「や?なんでもないよ?
ところで、何処かへ行く用事があったんじゃないかい?」
少し強めに吹いた風で乱れてしまった彼の髪を梳いてやりながら問う。
すると彼はまた愛らしく笑って、ぼくの腕を引いた。
「あぁ、そうだった。これから知り合いの魔女の家へ行こうとしていたんだ」
「ふぅん?魔女?」
「あぁ。魔女の一族とは昔からの馴染みでな、今日は私の友人とティーパーティーの約束をしていたんだ」
場所は近いから、1人で行くことを父様に許可して頂いて。
護衛やら側近がいたのでは楽しめないからな。
そう言って、ユーリは楽しそうに話す。
それを見てぼくまで嬉しくなっているはずなのに、何故か胸の奥の方がチクリと痛んだ。
(………なに?)
訳も解らないまま、ぼくはユーリに手を引かれながら森を進む。
その間もユーリはその魔女について嬉しそうに話してくれた。
だけど、ぼくは顔を歪めてしまいそうになるのを必死に堪え、旅をして身に付けたお得意の笑みを浮かべ続けていた。