Another Novel

□Jekyll and Hyde
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『ゴメンて。怒った?怒ってるよね?』

「うん」

『…………ぷふっ…!』

「ちょ、なんで笑うんですか…!」




 こっちは真剣に怒っているというのに、レティはまたもや吹き出していた。
 しかも、どうやらツボッたらしい。


 もう……性格悪いよ。
 人をからかってそんなに楽しいの?

 そう考えていたら、レティが「シアだから楽しいの」とまた笑っていた。



 ………うん。
 筒抜けだね。

 筒抜けに決まってんじゃん。
(レティにツッコまれてしまった…)




「…もう、代わって下さいぃぃ…」

『ぇぇ?どうしよっかな〜。傍観してんの楽しいんだけどな〜』

「僕は楽しくない。怖いです…っ」

『にひっ。あと、もちっとしたら代わってあげるよ』




 だからそれまでもー少しの辛抱な。
 そう呟いて、レティは小さく欠伸を漏らしていた。


 まぁ…仕方ないよね。
 だって、レティは昨夜殆ど寝ていない。

 昨夜はずっとレティがパドローネと一緒にいたから。



 あぁ、パドローネっていうのは僕達を造り出したお方。
 あのお方が、人気バンドDeuilのボーカル……ユーリのDNAから僕達を造り出したんだ。

 どうやってあの取り巻き達の目を掻い潜ってDNAを窃取してきたのかは知らないけど…。


 でも、彼のDNAを手に入れても完璧なホムンクルスを完成させることは困難なことらしい。
(吸血鬼のDNAは相当複雑らしいよ)

 だから僕達は、ユーリとは容姿こそそっくりだし一応は妖怪だけれど、僕達は吸血鬼じゃない。

 僕達はあの人を模して造られたホムンクルス。



 僕達は………、






「んぁ?インキュバスじゃん」






 すると、不意に背後からガサガサと葉擦れの音が聞こえてきた。

 その聞き覚えのある声にレティが微かに舌打ちをして、一方の僕は一瞬にして体が竦んでしまった。



 怖いんじゃない。


 怖いんじゃないけれど……。




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