Another Novel

□pluie 〜fantoccini〜 4
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「……大丈夫、か…?」




 問い掛けに返事をしたいが、急激に渇いてしまった喉ではうまく声が出ない。
 出そうとすれば、激しく咳込んでしまいそうで。


 代わりになんとか1つ頷くも、戻した視線は自分の手元を捉えたまま動かない。




「………………………」




 いつの間にかオレは、硝子片を手にしていた。




「……それ、棄てるから………寄越せ」




 隣で吸血鬼が何かを言うが、オレにはなんて言っているのか解らなかった。


 ぼうっとしてしまっている脳では、何も考えられない。

 何も、理解できない。



 というより、再び頭の中で鳴り出したノイズの所為で、うまく聞こえなかった。



 ざぁざぁと降り続ける雨音。

 頭中にそれは木霊し、何も聞こえないよう周りの音を掻き消してしまう。



 けれど、狂ったように歪んだ世界に、

 そっと差し出された、白い手。



 それを捉えて、助けを求めるようにオレは顔を上げた。




 あぁ……この、映像は……………………。




 ゆっくりと見上げた視界に映ったのは、





 眩い銀糸を風に靡かせ、優しく、そっと微笑んでいる………


 吸血鬼の顔。





『―――…スマイル』










「……うるせぇ」

「…ぇ?」




 オレの顔を覗き込むように、隣にしゃがんでいた吸血鬼の体を押し退ける。

 そうすれば、突然の出来事に全くついていけてない奴は、その軽さもあってか、簡単に後方へ尻餅をついた。


 オレはそんな奴を気にするでもなく立ち上がり、
 そしてふらふらとデスクに近付いていった。




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