Another Novel
□pluie 〜fantoccini〜 4
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なんだ?さっきから……。
オレ、まだ寝ぼけてんのか?
軽く頬を抓ってみるが、普通に痛みを感じる。
なら、夢を見ているわけではなさそうだ。
(………あぁ。きっと、頭ばっか打ってるからだ)
2回とも奴の所為だけどな。
そう思いながら奴を見れば、吸血鬼はいつの間にか壁際に立っていた。
壁に正面を向け、足元を見詰めたまま固まっている。
(なんかあんのか…?)
微かに重たさの残る足取りで奴の背後へ近寄る。
すると、そこに散らばっていたのは、粉々に砕けたコップの破片と、もう乾いてどす黒く変色していた血痕だった。
「―――っっ!」
それを見た瞬間、自分が気絶する前の記憶がフラッシュバックのように、脳の中で思い返された。
途端、オレは膝から床に崩れ落ち、同時に痛んだ左眼を押さえた。
しかも、うまく呼吸ができず、今にも息が詰まりそうで。
苦しくて、生理的に涙ぐんでしまった。
その歪んだ視界に映ったのは、無数の血痕と、コップの破片。
あぁ……世界が、歪んでいる。
その歪んだ世界の中に現れたのは、独り雨の中で蹲る、小さな子供の姿。
碧い髪は雨に濡れ、羽織る外套すらもびしょ濡れ。
そして、その子供の傍らには…………………
鈍く光る、ナイフ…………。
「―――おい」
「っ!」
突如、腕を掴まれた。
それによって我に返り、
ゆっくりとその白い手を伝い視線をずらせば、そこにあったのは黒髪の吸血鬼の顔。
その無表情な顔が、厭にオレを冷静にさせた。