Another Novel

□pluie 〜fantoccini〜 3
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 内容を全く読まずにページを捲っていると、ふと吸血鬼はゆっくりと口を開き。




「じゃあ、……ココア、作って」




 こちらを見詰め、呟いた。




「じゃあってなんだよ、じゃあって」




 隣にいる理由を訊いてるってのに、なんでそういう答えになるんだよ。
 明らかに可笑しいだろ。


 そう思いながらもう一度彼を見ると、そこには相変わらず何を考えているのかよくわからない表情があって。




「用が、あれば……いいんだろう?」




 隣にいても。










 何なんだっつの…!

 なんで、オレが作ってやらなきゃならないんだよ。


 そう胸中で文句を吐きながらも、着々とココアを作っていく、オレ。

 しかも、奴の味好みに。




(牛乳よりココア多めとか……ガキか!)




 あんな成りしてるってのに、中身はまだガキなのかよ。
(…いや。よく考えたら、他の2人も似たようなもんか…)


 つか、なんだかんだ言って、ここに来てからずっとオレが奴らに飯作ってやってねぇか?
 腹減ったからなんか作れとかって…。

 気付けば料理のレパートリーが確実に増えていってる。



 オレはお前らの召し使いじゃねっつの!!










「……ほら。できたぞ」




 作り終えたココアを持っていけば、黒の吸血鬼は暢気にソファーの上で転た寝をしていた。


 あれから10分も経ってねぇぞ…。




「……ん。……ありが、と」

「お前な…人に作らせといて寝てんなよ」




 はぁ。と、溜息を吐いて、どかりとソファーに座る。

 すると、何かを感じて視線を隣へずらせば、彼はココアに口を付けながらこちらを見詰めていた。




「な………なんだよ」




 少し怯み気味に問うが、吸血鬼は表情を崩さない。

 それはまるで、人形のように、無表情。




「……ううん、…なんでも、ない」




 再びココアの入ったマグカップに口を付けるのを見て、そうか…と呟いてから、オレは静かにリビングを出た。




 何故か、吸血鬼はついてこなかった…。




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