Another Novel

□pluie 〜fantoccini〜 2
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 当たり前のように、頭の中へ流れ込んでくる、知識。


 『オレ』のものではないのに、恰も『オレ』のものであるかのように。








「――――っ?!」








 すると突然、頭に激痛が走った。


 余りの痛みに呻き声を上げ、咄嗟に痛む頭を押さえる。
 だが、押さえたところでその痛みが引くことなんてなく。




「っ、……ぅっ」




 そんな、痛み続ける頭の中で、頻りに繰り返される映像。


 雨に打たれながら立ち尽くす、外套を身に纏う小さな少年。
 微かに、その姿が雨に消されている。


 ……否。

 体が、透明なんだ。
 身に纏った外套でさえ透け、雨に溶けている。

 そんな少年の頬を、止め処なく流れていく、雫。

 色違いの双眸から流れていく……………透明な、










『呪われてなんか、………!』








「うるせぇ!!」










 叫んだ自分の声が、厭に谺した。

 けれど、そんなことどうだっていい。




「うるせぇ、うるせぇ、うるせぇ…!」




 どんなに声を張り上げたって聞こえてくる、ノイズのような雨音。


 頭に、胸に響き、総てが痛む。

 頭も、胸も、身体も、左眼も。

 雨に打たれ、感覚を奪われるように。


 冷たい痛みだけが身体中に走る。




「うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ」




 総てが痛む度に、頭に浮かぶ姿。

 雨に打たれ、動くこともせずに、ただ、姿と涙を雨に隠す子供。





『ねぇ……、ここにいるよ?』



『ぼくは、ここに……いるよ…』






「うるせぇ…!」





 その映像に重なるようにして浮かんだのは、碧い髪の青年。

 子供と同じ色違いの双眸の彼が、左眼に手を添えている。

 雨の中。


 そして浮かべた、哀しい微笑み。




 …………いや、自身に対する嘲笑か…。





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