Another Novel
□pluie 〜fantoccini〜 2
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「あぁ……あのインビジブルから、生まれたばかりの人格で……まだ、名前がないのか…」
その台詞に、自分でも驚く程過敏に反応してしまった。
見詰めた先で、彼が不思議そうに小首を傾げる。
あぁ……そうか…。
「?…お前……彼奴から、生まれたんだろう…?」
違うのか?と、瑠璃色の双眸が問うてくる。
けれど、オレはその瞳を見ているようで、全く見てはいなかった。
オレの思考は専ら、違う方へと向いてしまっていたから。
オレの頭の中で、ぐるぐると回る単語。
『インビジブル』
聞き慣れない筈のその単語が、鮮明に色濃く脳に焼き付く。
そして、その単語から拡がっていく、知識。
インビジブル………透明人間。
次から次へと、当たり前のように、以前から知っていたことのように、突如理解していく己。
そう、総ての事実を。
『オレ』は、生まれた。
オリジナルから。
『オレ』という存在を生み落とした、そのオリジナルは、
透明人間である『スマイル』だ。
そして、あそこに座っているのは……
「…それがどうした?黒の吸血鬼」
挑発するように呟けば、黒髪の彼は、微かに双眸を細めた。
少しだけ、その顔を顰めさせて。
あれは、銀の吸血鬼…ユーリの魂の欠片から生まれた分身だ。
その彼がここにいるということは、ここは彼の住まう、ユーリの別邸か。