Another Novel
□三日月とアメと
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だって、まだあんなに小さいのに。
あんなにも真っ直ぐな瞳でオレを見て。
『オレも働く』
なんて、言ってくれるだなんて。
たぶんきっと、あんな小さな子供でも、オレ1人で生計を立てていくことは容易じゃないと、朧ながらに理解しているんだろう。
ただでさえ、日々の生活にまだ余裕を見つけられなくて、毎日へたばっているオレを間近で見ているんだから。
(そりゃ……普通気にするわなぁ)
ヘキだって、オレになるべく負担が掛からないようコウと家事を分担してくれていたり、アッシュの面倒も1番見てくれていたりする。
アッシュなんか、我が儘言いたいだろうに、アレが欲しいとかコレが欲しいなんてあまり言わない。
だから、オレがへたばっていたって、ギリギリでも毎日それなりにうまくやっていけているわけで…。
(…もっと、しっかりしなきゃな……)
優しくて頼もしい弟達に感謝すればするほど、自分の不甲斐なさが腹立たしくて、情けなくて、遣る瀬無くて、焦りが生まれて。
頭痛と吐き気と、怒りと悲しみと、居心地の悪さと嬉しさと…。
総てがジワジワと徐々に自分を喰らっていく。
そんな、気持ちの悪さ。
「ハクー。これ、後ろに棄ててきてくれ」
「わかりました」
空き瓶の収まるケースを、店の裏に積み上げていく。
もう、この酒の匂いにも慣れた。
パシリにも、重労働にも慣れた。
だけど未だに慣れない、この、いろんなものが綯い交ぜになったような感情。
そして、自分に全ての責任が伸し掛かっているという、拭い去れないこの重圧感。
…まぁきっと、一生慣れることはないんだろう。
それはオレが子供だからとか、そういう理由ではなくて、一生慣れてはいけないことだと思うから。
慣れてしまったら、何処かで手を抜いてしまうだろうから。
それでもやっぱりオレ1人では無理だから、オレが総てに押し潰されてしまわないようにコウやヘキ、アッシュの助けが確かに必要で。
だから3人は3人なりに、オレに迷惑が掛からないよう気を遣ってくれているわけで…。
でも、それを理解すればするほど余計に苦しくて、
もっとどうにかしなきゃ、しっかりしなきゃ、なんていう焦りが伸し掛かってきて。