M短編2

□色のない
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わたし、役に立たないから

そう告げた少女の瞳は悲観的だったが、それでいてどこか全てを諦めたようであった。
虫の息である男を抱えたまま大門の前に座り込む姿は、まるで異常だった。
それこそ戦場に似つかわしくない光景で、僅かばかりの畏怖の念を覚えた。
息を飲んだまま動くことが出来ないでいたが、呂布が現れたことによってそれも一変する。
あの男が乾を振り上げてもなお逃げる気配のない彼女らを認めると同時に、走り出していた。
助けなければと、まるで天命か何かのようだと思った。
助ければ助けたで、命拾いしたというのに彼女はあまり歓喜することもなかった。
それこそ助けに入った自身が危うく犬死にするところであったというのに。
他の者とは異なる反応に些か困惑してしまう。
まだまだ年端の行かない彼女が、生ある喜びに素直に胸を震わすこともしないなど。
余程の仕打ちを受けたのだろうか。

彼女の連れだという男たちは、見た目からも不心得者のようには到底見えなかった。
では彼女をあのような人と形にしてしまったのは、一体何者なのだろうか。
出会って幾分も経たないというのに、この気にしよう。
自身はそんな男だっただろうかと苦笑した。

再会の約定を交わして、去り際今一度彼女を振り返った。
願わくば、次に会う時はもう少し彼女が笑えているように、と。


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