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□あかい雨傘2
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「……」
一人で住むには広いくらいのマンションに住処を移してからは、気ままに生活してきた。
生活のリズムが定まっていない中で一つだけ習慣になっていることがある。
それは、朝食は大学のカフェで。
自身が決めたのではなくて、友人が毎朝そこに居ることとゼロス目当ての女の子たちが毎朝顔を出すことを強請ったからだ。
今朝もそれは変わらない、大して意識もしていなかった。
目の前の光景を見るまでは。
「…えーっと、これは…」
覚醒しきらない頭をフルに使って現在の状況の理解に臨む。
昨晩拾った少年がリビングで寝ている筈だ、だが二人掛けのソファはものけの空だった。
丁寧に毛布が畳んであることから、あの少年が几帳面であることが伺える。
だが肝心の少年の姿はない、代わりにダイニングテーブルの上にはまだ湯気の立つ料理が並んでいた。
「あ、起きたんだ」
「え、あぁ、おはよう」
キッチンからひょっこり顔を覗かせたのは、紛れもなく昨晩拾った少年だった。
片手に新たに料理の盛られた皿を乗せながら現れた彼は、テーブルに置くと満足げに息を吐いた。
「朝ご飯作ったんだ。食べて出掛けるだろ?」
「あ、うん…」
「早く座れよ。大学遅れちまうぜ?」
呆気に取られながら着席を促されると、ゼロスは素直に腰掛けた。
一口運んだ料理に思いの外感嘆する、要は自分好みの味付けだったのだ。
ある程度食事が進んだところでゼロスは思い立ったように声をあげた。