R短編

□黒いサスペンダー
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年頃の少女らの専らの話題は恋についてだ。
造船業で成り立っていると言っても過言ではない水の都に生まれたせいか、少女たちの憧れの対象になるのはいつも造船所の男だった。
事実異性に対して免疫のないパウリーも数人の少女に囲まれることは多々あるし、ましてや愛想の良いカクなんかは尚更だ。
恋愛というものに憧れというフィルターを重ねて想う相手のことを友人たちと話すという行為が何より楽しいのだろう。
その証拠に少女たちは我先にと告白したりはしないし、集って会話に華を咲かせる時分の方が些か元気が良く見えた。

年若い彼女たちが楽しそうなのは何よりだし、ああいったものは女性特有なものだろうなと、今も輪になって楽しげな少女たちをぼんやりと見ながらパウリーは愛煙の葉巻に火をつけた。
破廉恥が口癖なパウリーだって可愛らしい女性は好ましい。
仕事の邪魔にさえならなければ見学だって全く問題ないと思っている。
そんな寛容なパウリーもひとつだけ気になることがあった。

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