M短編

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時折発作のように、血が疼く。
大抵は当たり障りのない存在を手に掛けて生臭い液体を頭から被れば、自身でも驚くくらいに鎮まった。
定期的に訪れるそれはまるで浜辺に寄せる波のようだったが、自分の発作はそんな穏やかなものじゃあない。
もっと薄汚れた実に身勝手な欲望だ。

今回の任務期間も適当にやり過ごしていたが、今日この日ばかりはそうもいかないらしい。
眼前に無防備に晒された血色の良い首筋に激しく欲情しているのだから。
突き上げる衝動を抑え込んで暫く経つが、どうにも治まる気配はない。
噛み付いた傷口から滴り落ちる血を舐め上げたら、一体どんな味がするだろうか。

考えただけでルッチは理性を手放しそうになった。

「パウリー‥」

興奮を隠しきれない様子で彼を呼ぶと、パウリーが振り返ると同時に両腕を捻り上げた。

「、なっ!なん、だよお前‥ひ、っ!」

音がするくらいに大袈裟に舐め上げられると、パウリーの喉が短く悲鳴をあげた。

「ゃめ、やめろ…っ」

震えながら手足をばたつかせるパウリーなどお構いなしに、ルッチはその喉元に歯を突き立てた。


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