M短編

□☆
1ページ/1ページ


唇を重ねるときの、待ちわびるような、恥ずかしさに耐え忍ぶような、何とも言えない表情が好きだ。

いつも通り口付けを送る時のような甘い雰囲気を匂わせながら、パウリーのあの表情を待ちわびる。
彼はカクからの口付けを待っているのだから、表情と姿勢は真剣そのものだった。

案外長い睫毛はスラリと伸びていて、髪と同じ金色だ。
それがカクの吐息に触れる度に、躊躇いがちに揺れる。
時間をかけたせいか、淡く色付く程度だった頬は真っ赤に染まっていた。
熱でも出たのかと問いたくなる様に、思わずカクは吹き出してしまう。

「…っふ」

「…カク、てめぇ…っ」

肩を震わせるカクの意図に気が付いたパウリーは、あまりの恥ずかしさに更に頬を染める。
よくもからかってくれたとカクを怒鳴ってやりたいが、なまじ気乗りしていただけに言い辛い。

「すまんすまん。お前さんがあまりに可愛らしいもんだから、ついからかいたくなってしまうわい」

「何だよそれ…」

若干むくれたような顔をしたパウリーを認めて、カクは頬を緩める。

「パウリー」

そうしてパウリーの顎に指先を絡めると、ゆっくりと引き寄せ唇を落とす。
軽く重ね合わせたあと、離れる際にいやらしく彼の唇を舐めていった。

「好きじゃよ」

眼前で少年のように笑むカクを見て、パウリーの顔は再び真っ赤に染まった。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ