M短編
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唇を重ねるときの、待ちわびるような、恥ずかしさに耐え忍ぶような、何とも言えない表情が好きだ。
いつも通り口付けを送る時のような甘い雰囲気を匂わせながら、パウリーのあの表情を待ちわびる。
彼はカクからの口付けを待っているのだから、表情と姿勢は真剣そのものだった。
案外長い睫毛はスラリと伸びていて、髪と同じ金色だ。
それがカクの吐息に触れる度に、躊躇いがちに揺れる。
時間をかけたせいか、淡く色付く程度だった頬は真っ赤に染まっていた。
熱でも出たのかと問いたくなる様に、思わずカクは吹き出してしまう。
「…っふ」
「…カク、てめぇ…っ」
肩を震わせるカクの意図に気が付いたパウリーは、あまりの恥ずかしさに更に頬を染める。
よくもからかってくれたとカクを怒鳴ってやりたいが、なまじ気乗りしていただけに言い辛い。
「すまんすまん。お前さんがあまりに可愛らしいもんだから、ついからかいたくなってしまうわい」
「何だよそれ…」
若干むくれたような顔をしたパウリーを認めて、カクは頬を緩める。
「パウリー」
そうしてパウリーの顎に指先を絡めると、ゆっくりと引き寄せ唇を落とす。
軽く重ね合わせたあと、離れる際にいやらしく彼の唇を舐めていった。
「好きじゃよ」
眼前で少年のように笑むカクを見て、パウリーの顔は再び真っ赤に染まった。