M短編

□虜
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機会が無ければ、生涯隣に誰かを置く事も無い。
そんな機会が例えば訪れたとしても。
女性を娶るなど、己には有り得ない事だと思っていた。
それがまさか、異性はおろか自身が同性を欲する日が来るなんて。


他人に興味がわくことなど、彼にとっては青天の霹靂であった。
何故かと問われれば、逆に彼自身が何故かと問いたかった。

明確な理由はない。
ただ、毎日同僚として接している内に、あの金糸に触れてみたくなった。
初めて髪に触れた日を境に、もっと触れてみたい、その何物にも屈しない強さを穢してみたいと欲は強くなるばかり。
そうして抑えきれなくなった欲を開放するように、カクはついにパウリーを浚ったのだった。


薄暗い寝室に閉じ込めて。
ロープアクションを得手としているパウリーの懐からロープを取り出し、彼の手首をまとめあげた。
凝った造りの寝台の装飾にそれを括り付けると、完全に動けなくなったパウリーに覆いかぶさる。

何をされるのか。
怯えを滲ませる彼を見下ろすカクの瞳は狂気染みていた。
何をするのか。
そう震える唇でやっと言葉を紡ぐと、彼は馬鹿にしたように嗤う。
本当は何をされるのか、うっすらわかっている。
ただ、それを認めてしまえば、何かが崩れてしまいそうだと、パウリーは思う。

伸ばされた手に拒絶の意を込めて、身を捩る。
比較的自由だった両足でカクの腹を蹴り上げた。
それがカクの癇に障ったようで、それまで笑みを浮かべていた彼の瞳は途端に鋭くなった。

頬を思い切り叩かれる。
別に他人に手を上げられたことがない訳ではない、むしろ喧嘩の経験なら幾らでもある。
それでも呆気にとられてしまったのは、信頼していた仲間からの突然の仕打ちを受け入れられなかったからだろう。
腹を殴られ、身を悶えさせている間に服を破かれる。
あっという間に何も纏わぬ姿になると、パウリーを跨いだカクは無遠慮に体を暴いていく。

「やめろ…!カクやめろよ!」

「ひっ…っ、やめ、このヘンタ…イっ」

ばちん。
そんな擬音が部屋中に響き渡る。
先ほどよりも更に茫然とした顔をしたパウリーと、それを無表情で見下ろすカク。
赤く腫れ上がった頬に手を添えることも出来ないというのに、そこへ痛みと熱が集中していく。

「黙れ」

「っ…カク…?」

常よりもずっと低い声音で命令される。
乱れた髪を乱暴に掴まれ、痛みに声をもらすとそのまま咥内に乱暴に何かを押し込まれた。
それが何かと問う必要はない。
同性ならばそれの青臭さも、不本意ながら昂ぶった時の感触もわかってしまう。
パウリーにとってカクのこの行動の意図がわからず、咥内を行き来するそれに気持ちの悪さと恐怖だけを感じていた。

「…っは、パウリー…、お前さんも随分なヘンタイじゃな。ヘンタイのをしゃぶって勃ってるんじゃからな…っ」

「ん、ぐぅ…っ」

目線だけを上げれば、自身の顔の上で腰を揺らすカクの姿が目に入る。
蔑んだような目線に耐えられず目を背けるが、さらされたままの自身を握り込まれ、パウリーは大袈裟に反応してしまう。
カクの腰と同様に上下され、いやが応にもパウリーからは鼻にかかった喘ぎが漏れた。

「まるで雌犬、じゃな」

クッと嗤いを零す。
怒りと羞恥で顔を歪めた瞬間、パウリーの顔にカクの欲が放たれた。

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