B短編

□鳶色の背中
1ページ/2ページ


血の繋がりほど絶対で、時に不確かで曖昧なものはない。
目の前の親子を見て、俺はふと思った。
闇に堕ちたかつての勇者を倒し、二つの世界を統合させ、漸く世界に平和が訪れた。

不慮の事故で離別することになってしまった親子は、真実を知ることによって理解し合った。
育ての親と実の親の三人で、無理やり空けられた溝をゆっくり埋めていくのだろうと。

彼に淡い恋心を抱いていた俺は自身と彼の別れに僅かな寂寥感を感じながらも、不遇な運命に弄ばれた少年が少しでも幸せならばと思った。
それなのに、あの男はまたあの少年を傷付けるのだという。
当事者であるからと、重すぎる程の責任感にその身を雁字搦めにし、誰の手も届かない場所へと飛び去るのだと。

少年期と青年期の狭間を彷徨する不安定な年頃だ、十七歳というのは。
まだまだあどけなさを残す少年に、あの男はなんて表情をさせるのだろうか。
当事者以上に当事者らしい仲間を余所に、別れを互いに告げなければならない彼らは随分と淡白だった。
これが永遠の別離になるかも知れないということを、理解しているのか到底量れない。

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ