M短編2
□あかい雨傘
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「へぇー、こんな広い部屋に一人暮らしなんだ」
上がるなり素直な感想を零す拾い物の背中を見詰めながら、ゼロスは何故こうなったのか己の行動を顧みていた。
まず、拾い物は明らかに未成年だ。
発育具合から考えて高校生くらいだろう。
十八歳未満の子どもは夜十時以降は補導されるはずではなかったか。
ならば彼は十八歳を過ぎているのか、到底そうは見えないけれど。
次に彼は何故あの植え込みにうずくまっていたのだろうか。
親は、家は。
最後に、何故自分は初対面の彼を拾ったのだろう。
しかも、相手は健全そうな少年だ。
これが少女なら両手を挙げたのかと聞かれれば、またそれは困るのだが。
「(…止めよ、アホくさ)」
段々と考えるのが面倒になったゼロスは、一旦思考を停止させ風呂場へと向かった。
入浴に必要なものを一式揃えると、未だにキョロキョロしている少年に声をかける。
「しょーねん、風呂使って温まんな。そのままだと風邪ひくぜ」
そう告げると眼前の少年は意外そうな眼差しでゼロスを見遣った。
「…良いのか?」
「良いも何も…。風邪ひかれたら困るし、付きっきりで看病なんて出来ないぜ?」
首を傾げた少年に当たり前のように答えると、彼は口元を微かに綻ばせる。