M短編2

□この手が届かなくとも
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「おーいっ。コレット!ゼロス!」

耳慣れた声音に振り返ると、愛用している剣を鞘に収めながら此方へ歩いてくるロイドが目に入る。

「お疲れ様っ。ロイド!」

「今日もキマッテたぜー?ハニー」

二人でそれぞれに言葉をかけると、額に汗を滲ませた顔が柔らかく綻んだ。

「何の話してたんだ?」

何の意図もなしに問うているだろうロイドに二人は一度顔を見合わせ、擽ったそうに笑った。

「へへっ」

「俺様たち二人ともハニーが大好きって話」

「な、なんだよ急にっ」

紅葉のように頬を真っ赤に染めたロイドは恥ずかしさからか声を荒げた。

「‥まぁ、けどさ」

一呼吸置いて落ち着きを取り戻したロイドがまだ温かい指先で、落とされている二人の手を持ち上げた。
呆気に取られている二人の手をロイドのそれが柔らかく握り締めた。
そうして再び彼の口元は弛められた。

「俺も、コレットとゼロスのこと好きだぜ」

きっとそれは親愛という温かい感情が齎した言葉だ。
自分たちの望むそれとは種類が違う。
触れた指先から全て伝わってしまいそうで、少しだけ泣きたくなった。
これ以上は望まないから、だからその太陽のような笑顔で闇を照らし続けていてと。
困ったような、泣き出しそうな酷似した互いの表情を盗み見て、互いに口元を歪めた。

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