恋すてふ

□レモン
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「やはり消去法というのは‥気に入らないな」

「え?」

思わず口を衝いて出た言葉はロイドには届いていなかったようだった。
別に聞こえても良かったのだが‥などと思いつつも、彼に本音を聞かれていなかったことに安堵する。

「‥で、どういったことを知りたいのだ?」

「え、あ‥だから‥その‥」

早々に本題を切り出すと、赤らめていた頬を更に赤く染めて俯いてしまう。
ごにょごにょと咥内で何かを喋るだけで、一向にクラトスの耳には届かない。
気長に待つつもりだったが、眼前のロイドに痺れを切らし遂には嘆息した。

「ロイド」

「‥え‥」

顎を自身の指先で軽く持ち上げると、面食らった表情をしたロイドと視線が絡んだ。
瞳を細めて顔を近付けると、更にロイドは赤面した。
堪えきれなくなったロイドが何か言葉を発しようとしたが、実行される前に彼の唇を己のそれで塞いだ。

「‥ん‥、ぅ」

軽く触れるだけのつもりでいたのに。
あまりの唇の柔らかさに酔ってしまい、いつしか夢中で貪っていた。

「‥はぁ‥、クラ‥トス‥?」

「すまない」

離れた唇に銀糸が結ばれる。
ロイドとは今日初めて口付けを交わしたが、それ自体は初めて経験するものではない。
しかしそれが酷く淫猥な光景に見えてしまいその場に居られなくなってしまった。
惚けるロイドに一言謝罪を残して、溜まらず部屋を飛び出した。

「‥レモンの味、しなかった」

後に残されたロイドの呟きはやがて訪れた静寂にのまれた。


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