恋すてふ

□flashback
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モノクロになった背景に飛び散る鮮やかな朱。
それが彼の髪だったか、彼の躯を流れる血液だったか。
もう鮮明に思い出すことは出来ないけれど。

『裏切り者』

まるで愛の言葉を囁くように、うっとりとした声音が忘れられないでいる。
記憶にこびり付いた朱、朱、朱。


「う゛ぁぁあー‥っ!ゼロ‥ス‥ゼロス‥!」

何度でも、何度でも。
縋るように、責め立てるように。
脳が。
眼が。
耳が。
腕が。
指が。
全ての器官が彼を忘れられない。

「‥ゼロ、ス‥」

罪に苛む俺を嘲笑うように、愛しむように、記憶に巣くう彼は背後でいつも手招いている。


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