M短編2

□結局あなたとおれは
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「…ん」

目を覚ますと、昨日からとっている宿屋の天井が視界に広がる。
どうしてと考えながら身を起こすと、隣の寝台には白一杯に映える赤が。

「ゼロス…っ」

急いで駆け寄り、胸に耳をあてる。
ゆっくりと穏やかに呼吸する彼に、ロイドは思わず涙を浮かべた。

「ごめんな。俺を庇ったばっかりに…」

意識を失う前に見た光景を思い出してロイドはまた僅かに肩を震わせる。
横たわったゼロスの蒼白い顔を見て、心臓が止まるような思いをした。
大袈裟な意味ではなくて、本当にそんな心持ちだったのだ。

「生きててくれてありがとな。…おれ、ゼロスが死んだら…」

ポツリと呟いた言葉のあと、不意に指先を握られた。

「…そりゃあ大袈裟だぜ、ロイドくん」

いつもより幾らか弱々しいゼロスが、困ったような笑みを浮かべて此方を見ている。

「ゼロス!」

「リフィル様が治療してくれてるのもうっすら聞こえてたしさー。あ、俺様意外と大丈夫かも?って思ってたんだぜ?」

「だけど!ゼロス…凄い血の量だったろ…。俺本当にお前が居なくなるかと思っ、た」

ぽとん。

白い指先に一滴。
温かいそれが涙だとすぐに察して、ゼロスは思わずロイドを抱き寄せた。

「なっ、ロイドくんなんで泣くの?!」

「よかっ…たっ、ゼロスが居なくな、たらおれ…っ」

しゃくりあげながら、ただひたすらゼロスがゼロスがと泣く恋人の何と可愛いことか。
むず痒さに何となく自身の頬を赤らめながら、自分だって庇ったのは同じ理由だったんだと、ゼロスはひとりごちた。
ロイドに襲い掛かるモンスターを見て、急激に体が冷えていった。

失ってしまうかも知れない。

そう考えたら、途端に恐ろしくなってきて、飛び出さずにはいられなかった。
気が付けば耐え難い痛みに襲われ、遠くに仲間たちの切羽詰まった声を聞いている。
庇ったロイドの姿を確認出来なかったけれど、ゼロスは良かったとさえ思っていたのだった。

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