M短編2

□この手が届かなくとも
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地に根を張る花が懸命に空に伸びるのは、眩く煌めく太陽に気が付いて欲しいから。

小さい頃からずっと見てきた。
胸の奥にいつもあるぽわぽわとした優しい感情は、ロイドが生み出してくれたもの。
どんなに辛いときでも、それがあると思えば乗り越えられた。
とっても大切なものだから、洋服越しに胸に手を当てて温かみを感じるのが好きだった。
大好きなロイドが私にだけにくれた、淡い恋心。

第一印象は最悪だった。
子どものような純粋な瞳で理想論ばかりを語る。
現実のどうにもならない部分を目の当たりにしても、いつも希望に満ちていた。
そんな真っ白で煌々した存在は、あっさりと俺の凍てついた心を溶かしていった。
枯れ果てた大地に染み渡る潤いみたいに俺にゆっくりと、でも着実に浸透していく。
諦めと嘲りばかりのつまらない心に温かみを与えてくれたのはロイドだった。

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