Short Story

□口元に微笑みを
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麻矢様リクエスト
ミクリ夢
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「貴女と初めて出会った日のことを、今でも覚えています」


 突然の言葉に、紅茶を持つ手が止まった。向かい側に座るミクリは、とても穏やかな顔をしている。私が少しだけ首を傾げると、ミクリが、ふふ、と優雅に笑った。


「お転婆でしたね、あの頃は」


 からかうように見るものだから、なんとなく悔しくなって視線を泳がせた。けれどそれは逆効果だったらしく、ミクリが堪えきれない様子でくすくすと笑った。悔しい。


「からかわないで。あれは…、不可抗力よ」
「ポケモンを持っていないのに草むらに入ったことが、ですか?」


 どうやったらあんなに奥まで入れるんですか、と続いた言葉に、何も言い返せなくなる。
 確かに、ポケモンを持たずに草むらに入ったのはいけなかったと思う。だけど、追い回されるなんて思いもしなかったんだから仕方ないじゃないか。

 未だにおかしそうに笑うミクリを睨んでから、これ以上墓穴を掘らないようにカップを持ち上げた。


「まあ、そのお陰で、私は貴女と出会えたんですけれど」


 運命的じゃないですか、と笑う彼に、馬鹿じゃないの、なんて軽口を叩きながらカップに隠れた口元が弧を描くなんてあるワケないじゃない。

(お姫様なんて似合わないけど)
(貴方が助けてくれるから)
(私はポケモンを持たないわ)




20091201 aruku


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