Short Story

□てるてる坊主
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犖様リクエスト
ナエトル夢
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 最近、雨ばかり降る。
 ポケモンセンターの窓に区切られた世界は、ここ数日いつでもどんよりと灰色をしていて、しとしとと静かに雨が降っていた。
 雨が上がるまでは旅には出られない。部屋でおとなしくしているしかないにしても、いい加減飽きてきた。


『いい加減雨止まねえかあ?』


 頭に乗ったヒコザルがやる気のなさそうにため息を吐いた。ヒコザルも、長く続く雨にうんざりしているようだった。


「(もう三日も箱詰めだし、仕方ないとは思うけど…)」


 横目でちらり、と部屋の中を見回してみる。ポッチャマは機嫌良さそうに(水ポケモンだからかなあ)ティッシュで遊んでいて、ムックルはポッチャマの飛ばすティッシュを必死に集めていた。

 …で、あと一匹はというと。


「…大丈夫?ナエトル」
『大丈夫だよ〜』


 語調はいつも通りだけど、全身を床に投げ出してぐったりとするナエトルは、明らかに『いつも通り』ではない。


「大丈夫そうに見えないよ、ナエトル」


 頭に乗っていたヒコザルが降りていき、ティッシュで遊ぶポッチャマに寄っていったのを見ながら、ナエトルに近寄る。
 頭にある小さな芽もちょっと元気がないように見えて、元気付けるようにゆっくり甲羅を撫でた。


『雨も気持ちいいけどー…やっぱり、お日様の光が恋しいよ〜』


 ぐったりとしたナエトルが余りにも可哀想でなんとかしてあげたいと思うけど、生憎ヒコザルは日本晴れを使えないし私も技マシンを持ってない。
 何が出来るだろう、と考えていたら、ポッチャマの投げたティッシュがふわふわとナエトルの頭に乗った。


「…そうだ!」


 ナエトルの頭にのったティッシュを手に取る。私の大声に驚いたのか、ポッチャマやヒコザル、ムックルも寄ってきた。

 手に取った一枚のティッシュを二枚に分けてから、片方を固めに丸める。丸めたそれを余ったもう一枚の真ん中に置いて、包むようにくるんでから、


「紐で結ぶ、と」
『何だそれは?』
「てるてる坊主!」


 てるてる坊主が何かわからないのか、不思議そうな顔をした四匹を尻目に、バッグの中からマジックを取り出して、小さな目と口、あとは頭に小さな芽を描いた。


「ナエトルっぽい?」
『えへへ、似てる似てる〜』
『似てるのはいいが、それをどうするんだ?』


 不思議そうなムックルの頭を撫でてから、窓に近寄る。相変わらず外は雨だ。
 結んだ紐の片方をカーテンの金具に結びつけたら、てるてる坊主はゆらゆらと揺れながら釣り下がった。



明日天気になあれ!

(翌日、からりと晴れた空を見てボクよりも嬉しそうに笑うキミが)(ボクの中に柔らかい陽を照らした)



20091011 aruku


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