歴史

□返す宛のない手紙
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返す宛のない手紙







桂さんへ


お元気でしょうか お久しぶりです

そちらでは 桜はもう咲きましたか

最後に文を送ったのは いつだったでしょう

桂さんってば 何時何処にいるかわからないから


恐らく この文を手に取る頃には

僕はもう 此処には居ないでしょう












外の景色を眺めていると 色々な事を
思い出します


ずっと昔 夏祭りに連れて行ってくれましたよね

普段 外へ出れなかったあの頃の僕にとって 何もかもがキラキラと輝いていて

まるで 異国の世界に来たかのように
胸がざわめいたのを 今でも覚えています


あの祭の帰り道


突然あがった とてつもなく大きな爆発音に驚き

思わず隣に並んだ足にしがみついて


「空を見てごらん」と 桂さんが弾んだ声で囁くものだから

おずおずと 顔を上げ 見上げたその先には



今まで見たことも無い
色とりどりの光の花が 夜空一面に広がり


驚きの余り 声も出ずに見上げていると

「あれは"花火"だよ」
と 教えてくれましたよね


今思えば

あれが最初で最後にみた 大きな花火でした



あぁ こんな綺麗なものがこの世界にはあるんだと

子供ながらも 感心しました
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